人里はなれた場所に一匹のオオカミが住んでいた。
オオカミは痩せこけ、力も弱く、他者を寄せ付けない、ひねくれ者だった。
そのくせ、とても寂しがり屋で、人間と仲良くしたくて、時折、人里に下りて行った。
人間は、最初はオオカミだと距離を置くが、やがて、その警戒を解き、
オオカミを迎え入れてくれた。
オオカミは、迎え入れてくれた嬉しさで、有頂天になった。
しかし、感情のコントロールが下手なオオカミは、人間に「喜怒哀楽」をそのままぶつけた。
嬉しいと必要以上にじゃれつき、哀しいと人間を遠ざけ、楽しい時は自分本位。
そして…怒りにまかせて人間に噛みつい(傷つけ)た。
何度も何度も…。
何度も噛まれた人間は、オオカミを追放した。
追放され、トボトボと元の場所に帰る時にオオカミは思った。
「そんなつもりじゃなかったんだ…」
一度失った「信頼」は帰って来ないことをオオカミは深く後悔した。
「一生、人里離れた場所で余生を過ごした方が良いのか?
その方が人間にとっても、俺にとっても良いのか?」
帰ってきた冷たい寝床に横たわってオオカミは考えた。
「変わるしか無いんだよな…変われるだろうか?」
真っ暗な寝床から、夜空を見上げた。